医療法人仁風会 日高病院
閉じる
▲TOPページへ


救急電話:099-223-3291 閉じる

ヒダカノセンセイ

ヒダカノセンセイ

センセイ.05

THE 骨折とヒップホップ

  • Shareする
 なかなか会えないうちにもう季節は秋ですね。みなさまお元気ですか。
秋晴れの毛深い季節となりましたが、行楽に読書。何をするにもよい季節です。
 秋といえばやっぱり「スポーツの秋」。
そしてスポーツといえばつきものなのがケガ。中でも一番つらいのが骨折。
 わたしのように、日々くたびれて、毛深くなったからだを無理に動かしたりすると、どこかが痛くなってて、病院に行ったら、
「あ、気づかない間に折れてたみたい」
なんて、経験ある人もたくさんいるはず。

ということで今回は骨折のはなし。なじみ深いケガだけに実はめっちゃ深いんです。

 と、その前にワタシの大好きな音楽『ヒップホップ』について語らせてください。ええ、いつもの脱線話です。

 ご存知の通り、ヒップホップとは黒人文化をルーツとした『DJ』『ラップ』『ブレイクダンス』『グラフィティ』の4大要素を中心としたカルチャー。
 今では誰でもわかる言葉ですが当時は衝撃的でした。現在ではアメリカの音楽業界で最大の売り上げを記録する一大ジャンルとなっています。
 最初にヒップホップを生み出した人たちは、まさかこの文化がファッション、映画界にまで大きな影響を与えて、セレブの最短コースにまでなるなんて、思ってもみなかったでしょう。

 ちなみに、初期のアーティストたちや作品たちは、『オールド・スクール(昔のスタイル。基本みたいな意味)』と呼ばれています。この言葉、なんかかっこいいでしょう?
 この話、ときどきDJをしているワタシにとって、この話は絶対に外せないお酒のつまみ。
「もう老害だから」という言葉を武器に、夜な夜な偉そうにヒップホップ講釈をたれています。

 「ヒップホップってなんか怖くて苦手」なんていう人もいらっしゃると思いますが、幅広いんですよ。いろんなヒップホップを聞いてその歴史をひもとくと、「普段聞いてたけど、あれ?この曲ヒップホップだ!」とか新しい発見ができたり、なんでラッパーに怖そうな人が多いのかわかったりして非常に面白くなります。
 そんな深みがある文化、ヒップホップ。
あとで『オールドスクール』なアーティストたちを教えますので、みなさまも機会あればぜひお試しください。




 え〜と、なんの話でしたっけ?
あ、『骨折の話』でした。
では、ヒップホップと同じく、その深くて深すぎる歴史について、触れていきますね。

 まず最初に、骨折の治療法を指導している研究グループの存在について説明しましょう。
この研究グループ、正式名称は『Arbeitsgemeinschaft Osteosynthese fragen』といって、ドイツ語で『骨接合問題に関するワーキンググループ』と言う意味。
 本部はスイスのダボスにあって、13名の外科医によって創設されました。

 それまで常識じゃなかった手術による骨折治療や、骨インプラントと器具の開発をしたりと、外科医にとっては超有名で超革命的なグループで、なんと50年以上も骨折外傷全般の研究治療に対する理論を構築し、世界中の医師や看護師に教育・指導を行っています。
 カンタンに言うとケガを学問にして、ケガの治療の基本を全世界の医者に広めているグループです。
 長すぎるので、略して『AO(アーオ)』。と呼ばれてます。



 実は…それまでケガの治療は、それぞれドクターの経験・判断で治療してたんですよね。
そんな中『AO』はケガに対して、理論的・学問的に治療の原則を広めることにしたんです。
つまり、ケガを治す時の基本中の基本。を全世界に発信している。というわけ。

 骨折の医療なんて、折れた骨を元の位置に戻してネジとか金属の板で止めるだけでしょ、みたいなイメージを持ってると思いますが、ちゃんと治すには使用する金具の選定から、手術のやり方までとてもたくさんの選択肢があって非常にめんどくさい。
 こういった時に役立つことを記したのが『AO(アーオ)』。
 それはケガを治す医者のバイブルみたいなもの。全世界の医者が参考にしている理論です。
 つまり『ケガ治療のオールドスクール』というわけ。

 偶然に起こる骨折ですが、その治療はかなり戦略的。
恋愛みたいにフィーリングだけでは治せないというわけなんですよ。

 ちなみに、『AO(アーオ)』の創設は、くしくもヒップホップと時期の近い1958年!
当時の創設者たちも『AO(アーオ)』がこんなに全世界に広まるとは思っていなかったかもしれません。アーティストも医者もこの時代はみんながアツかったんでしょうね。




骨折とヒップホップ

『AO』の最初の13名の外科医は、ヒップホップで例えてみると

▶︎ ブレイクビーツの発明者『クール・ハーク』
▶︎ スクラッチ技術を普及した『グランドマスター・フラッシュ』
▶︎ ヒップホップという言葉を産んだ『アフリカ・バンバータ』

のような伝説的アーティストに例えてもおかしくないでしょう。
 ヒップホップも、ケガ治療も、当時の人たちが「そんなの音楽のジャンルにしたり、マジメに学問にしてなんの意味があるんだ?」的なことを、彼らの絶対的な自信の元に、文化、学問の根幹として定義したことで、全世界に知れ渡り、もはや普遍的存在になったということなのです。

 どうです?こうやって比較してみると医者の難しい話も音楽の話みたいでちょっと面白いでしょう?

じゃあ、『骨折治療における4大要素』といえばなんなのか?
大きく言うと…

●血流
●整復
●固定
●後療法
なんですが、次回の更新でお伝えしますね。

疲れたので今回はここまで!
「アーイェー!(アーオだけに)」



今回のセンセイ
  • 日高 正嗣

    (ヒダカ マサツグ)

    ●福岡大学医学部卒業
    ●福岡大学整形外科学教室出身

医療法人仁風会 日高病院

TOPページへ


ページの先頭へ戻る

ページの先頭へ戻る