またもや前回の更新から日にちが空いてしまいました。
え〜と…なんでしたっけ？
そうそう、グミキャンディの話…間違いました。『椎間板が飛び出るとどうして大変なことになるか』でしたね。

背骨の間に入っているこの椎間板、重労働や同じ姿勢を続けて力が加わりすぎると、椎間板の中にあるゼリー上の物質が、背骨の間から飛び出してしまうことがあるんです。ほら、グミキャンディも引き出しの奥でぎゅうぎゅうになっていると変な形で固まってたりするでしょ？そんな感じです。
こうなると、痺れたり、力が入らなくなったり、体が動きにくくなったり。動かすと痛くなったり。そうなってはじめて「あ、ヘルニアかも…あぁ、終わった…」ってなってテンションダダ下がりです。
（ちなみにこの状態を『坐骨神経痛』と言います）



なぜ、そうなるんでしょう？
背骨の周りにある神経がクセモノなんです。
ここの神経は『痛みを知らせる神経』『手足の運動を操作する神経』みたいに役割が決められていて、これがすごく細くて敏感。それを「潰れた椎間板」が突ついちゃう。これが問題なんです。
え？椎間板ってグミキャンディみたいなんでしょ？やわらかいから突ついても平気じゃん？そう思っちゃいますよね？

では、例えてみましょう。

『水が流れているホース（髪の毛くらいの細さ）』が何本も固まっている場所があると想像してみてください。そのうちのどれか１〜２本をグミキャンディで押してみる。すごく細いから、やわらかいもので押してもうまく流れなくなっちゃいますよね。

それが「痛みのホース」「手足の運動のホース」だったりすると…？
そう、これが痛みや痺れの原因と言うわけです。


ニュアンスうまく伝わるでしょうか？
ここで大事なのは『ヘルニア』がどの場所を突ついちゃうか。なんです。
だから、人によっては『ヘルニアと言われたけどなんともないよ』。って言う患者さんもいらしゃったりします。逆に、『ちょっとしか飛び出てないのにすごく痛い』。と言う人もいます。人によっては、尿や便が出にくくなったりします。これは老若男女関係ありません。

例えば、この前診察に来た僕の友人。まだ40代ですが、『誰かが24時間左足を思いきり金槌で叩いているみたいだ』って言ってました。これは飛び出たヘルニアが、左足の痛みに関係する神経をギュギュッと突ついちゃってるからなんですね。
背骨の方にヘルニアがあるのに、痛いところは手足や首。なんて人体の不思議です。（ちなみにこの友人、現在は深夜のクラブで一晩中踊れるくらい元気な生活を送っています）


怖いですか？
だけど「切らなきゃいけないんでしょう」「切ったら足が動かなくなるんじゃない？」
なんて思う必要はありません。
実は『ヘルニア』って、基本的には数カ月で自然に吸収され消失することが多くて、50～80％は手術をしなくても痛みは改善する。といわれているんです。
つまり出ちゃったヘルニアが溶けて無くなっちゃう。これも人体の不思議ですね。

ここで、僕ら外科医が言いたいことは「ヘルニアになったら、必ず手術ってことはない。」ってこと。
漫画やドラマみたいに、「これは大変。緊急手術だ！」てお医者さんが言うことはありません。安静にすることや内服薬、ブロック注射など方法で痛みを押さえて、ヘルニアがおさまるまで待つことも大事な治療法なんです。


まだ怖いですか？
「痛み止めの薬漬けになるんじゃないか」なんて思ってますか？
それも大丈夫。今は体への負担が少ない薬も出てますし、今の手術は「内視鏡」という器具で行うので、傷口も小さく翌日から歩けるほどです。（もちろん経過を見るため、数日入院の必要はあります）

「最近ちょっと痺れる」「なんだか体を動かすと痛い」。と思ったら心配する前に病院に来てください。
今のヘルニア治療は「こんなことで良くなるの？」てくらいまで進化しています。今後もどんどん進化していくことでしょう。


まずは、わかりやすいインタビューと、レントゲンで「どんな症状が出ているか」を調べます。
そして、症状によってはMRIで「どの神経にあたっているか」あなたの痛みの原因と生活にあった治療法をピシッと探ります。
「ヘルニアが出てくる前に、病院に出てこいや！」です。
まずは自分の体の状態を知ってください。それが安心につながります。
快適な生活ができるまで、お付き合いしますよ。

さて、次の「ヒダカノセンセイ」はどんなテーマにしましょうかね。


※今回、混ざってしまった趣味のキーワードの元ネタはこちら。（わかりましたか？）
＞tiktokより